ジョージ・ソロスは、ヘッジファンドの大御所であり、通貨の大量の売り浴びせによりイングランド銀行をつぶした男として有名であるとともに、慈善事業家、哲学者としても取り上げられる多面的な人間である。既に78歳であるにも関わらず、最近、また、ヘッジファンドの運用を自ら行っているという。数千億円の資産を持ちながら、この年で資産運用をするというのもめずらしい。別の意図があるのであろう。
日本のタイトルは、売るためにこうなってしまったのだろうが(講談社刊)、原題は、「The New Paradigm for Financial Markets - The Credit Crisis of 2008 and What It Means」となっている。 2007年に起きたサブプライム問題の背景には、いまだかつて起きたことがない信用収縮が起き始めており、2008年から世界の経済全体が危機的な状況に向う。というのが、本書の主張である。
ソロスは、ここ数十年ずっと、株価の動向や経済予測は基本的にできないと主張している。自然科学は、対象と観察者が分離できるが、社会科学は、対象と観察者が不可分であり、自然科学の知識を社会科学に当てはめることは、基本的に無理があると言っている。
その為、自然科学には、正規分布するような現象が多いが、社会科学的な現象には、何らかの予測されえないポジティブ・フィードバックがかかり、どんどん株価や住宅価格がつりあがったり、いわゆる経済学の理論では、数万年・数十万年に一度しかおこり得ないようなことが頻発してしまうと言う。
ソロスは、これを「再帰性」という言葉で説明しており、いつどこに起こるかは理論化できないが、 とんでもない行き過ぎはいろんな社会現象として、頻繁に起こると言っている。最近、このような主張は、天才数学者と言われ、フラクタル図形を作ったマンデル・ブローも主張しているが、ソロスは、数十年前から、このような視点で実際にヘッジ・ファンドに取り組み、結果、数千億円の資産を作ってきた。
ちなみに、当親サイトであるインテグラル理論でも、物理次元の法則と生物次元の法則、心理次元 の法則はそれぞれ違ったものであり、安易に別の次元に適応するのは、大きな問題を引き起こす可能性があると言っている。これを、インテグラル理論では、「カテゴリーエラー」と呼び、注意を促している。
ソロスが言っているから耳を傾けるというのも、あまり合理的ではないが、現代の金融システムは、数十年かけて起きた信用バブルの結果であり、実態経済とかなり乖離している。ふと、ここで眼を覚ましてしまうことになるかもしれない。エネルギー・食料問題も背景にあり、従来の世界経済の発展に長期投資をすることが、経済理論的にも、過去の統計的なデータでも一番であるという考えは、このあたりで崩れ去るのかもしれない。
最近は、一つの株を買うように、全世界の経済指標を買えるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ETF)等も登場し、以前よりも、格段に個人の投資環境が良くなった。また、個人でもレバレッジを掛けて、簡単に金融商品が買えるようになった。日経平均やNASDAQなどであれば、1000万円あれば、1億円くらい何の手続きもなく簡単に投資できてしまう。これは、結局、9000万円を借りているわけだが、あまりに簡単で、借りていることさえ、知らない場合もある。
FX(通貨証拠品取引)などは、100倍まで投資ができる所は普通である。もし、1000万円入れれば、個人でも10億円まで取引できてしまう。毎日、売り買いすると、売買高として記録されるが、めいっぱいの10億円を20日間、毎日売ったり買ったりすれば、200億円の売買高が達成される。そのうち、0.05%の収益を上げられば、1000万円が得られる。これが、信用枠の魔術といえば魔術。ちなみに、100倍のレバレッジをかけるということは、1%下がると、損失も100倍であり100%のマイナスになります。つまり、全額なくなりますのでご注意を。
ともかく、信用収縮が全世界で起きると、大変なことになる。そんな中で何を個人として、準備しておけばいいのか?判らないというのが、正直な所。せめて、医食住が確保できれば いいのかもしれない。が、結局、人間は恒常的な安定の達成など不可能である、ということを、受け入れざるを得ないような気もする。