Integral Japan Mail Magazine Vol.61

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          Integral Japan Mail Magazine
             No. 61 (2012/09/14)
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【1】 「発達志向型コーチング」講座に関するご報告
【2】 イベントのご案内
【3】 インタビュー・シリーズ 「インテグラルな人びと」〜第2回 久保 
隆司さん(2)〜
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皆様、こんにちは。今年はことのほか残暑が厳しいですね。健康にお気をつけ
てお過ごしください。今号とイベントのご案内とインタビューシリーズ「イン
テグラルな人びと」を中心にお送りします。

【1】「発達志向型コーチング」講座に関するご報告

6月から行われていた「発達志向型コーチング」講座は、8月18日の第3回をもっ
て完結しました。第3回では、具体的なテキストを元に筆者の意識構造の段階
を探っていくという作業とともに、実際の面接場面でクライアントの意識構造
の重心を探り、それに沿った支援を行うための質問をする、という実習をロー
ルプレイ形式で行いました。これらの実践作業を通して、「意識構造」と「意
識内容」の区別をすることの難しさ(たとえば、高度な内容のことを発言して
いても、それが必ずしも高い意識構造から発せられたものとは限らない等)を
実際に体感していただけたと思います。このロールプレイは毎回非常に盛り上
がります。「発達志向型コーチング」、またその根幹をなす「発達段階測定」
に関する講座・ワークショップは、今後も定期的に行っていきます。今後の日
程は、メールマガジン、ホームページなどでご案内いたしますので、今回お受
けになれなかった方は是非チェックなさっていてください。

【2】 イベントのご案内

直前のお知らせになり恐縮ですが、9月17日(月・祝)にケン・ウィルバー
研究会(別名:インテグラル思想研究会)を開催します。 事前のお申し込み
は必要ありません。研究会は、こちらから一方的に情報を伝達するというより
は、参加者の皆さまと意見や洞察を交換しあう、交流の場としたいと思ってお
ります。ご関心のある方は、どうぞお気軽にご参加下さい。

開催日時:9月17日(月・祝)13:00〜16:00 p.m.
開催場所:アトリエ・イフ・シーエーティー
〒158-0083東京都世田谷区奥沢6-32-9 ローズコート自由が丘2-A
(東急東横線・大井町線 自由が丘駅徒歩5分)
アクセスマップ:http://www.color-art.jp/access.html
参加費用:2,000円
参加条件:特にありません(事前予約の必要はありませんので、当日、会場に
おこしください)
主催:インテグラル・ジャパン総合研究所
講師:鈴木 規夫
参考資料:鈴木 規夫『インテグラル・シンキング』コスモス・ライブラリー
(2011年)
URL:http://integraljapan.net/
連絡先:inquiry@integraljapan.net/

*詳細につきましては、インテグラル・ジャパンのブログ
(http://blog.integraljapan.net/ )をご参照ください。

【3】 インタビュー・シリーズ「インテグラルな人びと」〜第2回 久保 隆
司さん(2)〜

インタビュー・シリーズ「インテグラルな人びと」第2回、久保 隆司さんの
回の続きです。著書である『ソマティック心理学』について、また、弊研究所
代表・鈴木 規夫等との共著『インテグラル理論入門』について、伺いました。

(前号より続き)

Q3. ご著書を拝読して、包括的であると同時に頭の中に見取り図が作りやす
いこと、「一人称、二人称、三人称」というインテグラル理論ではおなじみの
用語が出てくることなどから、本の作り方そのものがインテグラル的だなあ、
という感想を持ちました。久保さんにとって、インテグラル理論&実践は、ど
のような意味を持つものなのでしょうか? あるいは、どういう存在ですか?

A.3 『ソマティック心理学』(春秋社、2011)を書くことは、インテグラ
ル理論の有効性の実証実験の一つでした。インテグラル理論を知る知らないに
拘らず、複数の方々から、わかりやすいとのご感想を頂いており、ひとまずこ
の実験は成功だったと感じております。

私が米国で学んだ専門分野は、大きく分けるとソマティック心理学とインテグ
ラル理論の二つですが、インテグラル段階の重要性を明示したインテグラル理
論とインテグラル段階の実践的アプローチを提供するソマティック心理学は、
非常に相性が良いのです。当然といえば当然のことではあるのですが、当初か
らこのことを明確に自覚していたわけではありません。最初は両者の関係性に
はむしろ無頓着で、ただ興味があるとのことで平行して学んでいたのですが、
両者はその理論と実践の両輪であるという認識が様々な場面を通じて形成され
ていきました。次第に顕らかになってきた感じですね。次第にというのは、イ
ンテグラル理論自体がほぼ今日の姿(ウィルバー5)へと次々に(ライブ感を
もって)展開し、整備されてきたのが、2000年から2006年の間に掛け
てであり、運がよいことに私の留学期間とも大きく重なるのです。

さて、インテグラル理論の第一の目標は、インテグラル段階への意識の成長の
わけですが、既に述べたように、ソマティック心理学はそのための実践として
最も適切な手法であると考えています。ウィルバーがトランスパーソナル心理
学でトランスパーソナル段階についての左上象限的探求態度から、インテグラ
ル段階の四象限的探求態度へと重心をシフトしたことは、いわば小乗から大乗
への変容といえるでしょう。インテグラル理論の整備に伴って、心身の統合や
二人称的な関係性の重視が、インテグラル段階への発達のために必要不可欠で
あることが明確となってきたことで、ソマティック心理学が、今日のインテグ
ラル段階目前の意識の発達段階にいる21世紀の人類にとって、最も影響力の
ある重要な心理学たりうることを私は自覚しました。そして(どちらも大勢か
ら見ると、マイナーな存在ということもありますが)、インテグラル理論とソ
マティック心理学の双方に通じている者は(世界的にも)少ないので、自覚し
た以上、両者の結びつきを目に見える形で世間に知らせる必要があると考え、
『ソマティック心理学』の執筆の動機にもなったのです。したがいまして、
『ソマティック心理学』は、ソマティック心理学の著作であるのと同様に、イ
ンテグラル理論の著作といえるでしょう。

また同時に、ご指摘のように本そのものの作り(構造)がインテグラル理論の
実践例であります。つまり、『ソマティック心理学』は、二つを学んでいたか
ら自然と両者のテイストがブレンドされたのではなく、最初から、意識的にイ
ンテグラル理論を本の枠組みとしても導入し、作り上げた著作です。

『ソマティック心理学』において、インテグラル理論そのものは最終章にしか
登場しませんが、第一章から“三つの人称”の説明を加え、本文でも適切に人
称を使い分けながら、インテグラル理論を、本書全体を貫徹するメタフレーム
ワークとして使っています(必ずしもその全てが成功しているとまではいえま
せんが、少なくとも意図はしています)。また、個別に紹介した事項や技法は、
類似のものと差し替えても問題ありません。もし古くなったデータや廃れた技
法などがあれば、別の最新のデータやより適切な技法と、ILPのモジュールのよ
うに、交換的に置き書き換えることができるのです。読者の方が、より個別性
に沿った形で、理解を深めていただき、実践とつなげていただければよいので
す。このようなことが、インテグラル理論を知らない人でもわかりやすい印象
を与え、インテグラル理論をご存知の方には、より親しみやすく感じられる理
由なのではと思っています。

Q4. 久保さんは、『インテグラル理論入門』の共著者のお一人でもいらっしゃ
るわけですが、執筆にあたって留意されたことは何でしょうか? また、読者に
どんなことを伝えたいと思って執筆に取り組まれましたか?

A4. 鈴木規夫さんらとの共著『インテグラル理論入門I & II』は、インテグラ
ル理論への間口を拡げ、この二冊さえ読めばインテグラル理論に基づいた議論
が曲がりなりにもできることを目指して企画されたものです。

私は2007年秋に帰国しましたが、鈴木さんはたしか2005年に帰国され
(バークレーの公園での送別会も思い出されます)、インテグラル・ジャパン
も立ち上げられていました。それとは別に非営利の学会組織のような受け皿、
たとえばインテグラル理論協会の設立の可能性なども話し合ったこともありま
す。ただ、残念ながら、日本ではインテグラル理論の研究者がほとんどいない
実状からも棚上げとし、その代わりに基本教科書の役割を果たし、日常生活に
おいても簡単に使えるようなインテグラル理論の入門書の出版が先決というこ
とになりました。

ウィルバーの本が難しいという先入観から読まず嫌いの人が多くいるであろう
ことや、携帯性という点でも問題があること、邦訳された多くの著作も絶版に
なっていること、また誤訳もあることなどから、わかりやすくインテグラル理
論の基礎を紹介する本の出版が最低限必要だと感じていました。現地で、いわ
ばウィルバーから直接インテグラル理論を学んだ日本人は、鈴木規夫さんと私
の二人しかいませんので、インテグラル理論を少しでも多くの日本人に知って
もらい、とにかく気軽に応用してもらうための行動を自分たちでおこさないと、
という責任を感じていました。鈴木さんも同様の気持ちだったでしょう。

タイミングのよいことに、当時『実践インテグラルライフ』(春秋社)の翻訳
に取りかかられていた鈴木さんが、共同プロジェクト案を春秋社さんに相談さ
れ、入門書の企画が実現することになったのです。

執筆に関しては、まず基本を知ってもらいたいという意識が私に強かったこと
から、自然と私自身の執筆分担も決まっていった感じです。結果的に私の分担
箇所は大きくなりましたが、当初から決まっていたわけではありません。結果
的にそのようになったのです。特に、『II』で私が担当した第一部・理論編は、
当初計画されていませんでした。インテグラル理論の基本書としては、『I』
では紹介できなかったウィルバー思想の世界観を、たとえその輪郭だけでも紹
介する必要があると思ったので、それに1章分をあてることを提案しました。
ただ実際に書き始めると、1章だけでは、ウィルバーの世界観の基礎すら紹介
することは(当たり前と言えば当たり前でしたが)不可能であることが明白と
なり、結果的に第1部は4章構成となりました。ちなみに“ウィルバーの世界
観”は、当初、第一部のタイトルとして私が付けていたものですが、編集者の
意向で『II』 全体のサブタイトルとなりました。

当初、「ソマティック心理学へのインテグラル理論導入の可能性」といったよ
うな1章も書くことも考慮したのですが、私は『II』において、結局、応用編
的な章は書きませんでした。それは、ウィルバーの翻訳書の多くが絶版であり、
また将来絶版となる可能性も非常に高く、また過去の訳書に誤訳等も散見され
るため、基本的な世界観のまとめをここで書きとめておくことが、後学の方に
とっても、簡便性の観点から意味があると考え、個人的に第一部を書くことを
優先事項としたからです。また応用編に関しては、インテグラル・ジャパンの
代表として日本で一から実践的活動を続けられてきた鈴木さんに任せればよい
という考えも基本的にありましたし。

そして私の方は、これら共著では書けなかった応用編の一例として、『ソマ
ティック心理学』をまとめあげることにしたのです。流れとしましては、『イ
ンテグラル理論入門』でインテグラル理論の基礎整理作業を踏まえた上で、ソ
マティック心理学を対象にしたインテグラル理論の応用例を試みたということ
です。この文脈において、『ソマティック心理学』は、私にとっての『インテ
グラル理論入門III(応用編、番外編?)』 なのです。

(次号につづく)

久保 隆司さん略歴:
大阪大学人間科学部卒。米国ジョン・F・ケネディ大学大学院修了。臨床心理士。

著作:
『ソマティック心理学』(春秋社、2011、単著)
『インテグラル理論入門I ウィルバーの意識論』、『インテグラル理論入門II
ウィルバーの世界論』(春秋社、2010、共著)
『PTSDとトラウマの心理療法 心身統合アプローチの理論と実践』、『PTSDと
トラウマの心理療法ケースブック 多彩なアプローチの統合における実践実例』
(創元社、2009、訳書)

ホームページ 
http://integralsomatics.jp

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インテグラル・ジャパン・メールマガジン No. 61
配信日:2012年9月14日
発 行:インテグラル・ジャパン総合研究所
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発行人:鈴木 規夫

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