Integral Japan Mail Magazine Vol.60

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          Integral Japan Mail Magazine
           No. 60 (2012/07/22)
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【1】 鈴木 規夫ブログより、最近の記事のご紹介
【2】 インタビュー・シリーズ 「インテグラルな人びと」〜第2回 久保 
隆司さん(1)〜
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皆様、こんにちは。また発行間隔がしばらく空いてしまい申し訳ありません。
今号では、弊研究所代表・鈴木 規夫のブログ記事のご紹介と、待望の「イン
テグラルな人びと」インタビュー・シリーズ第2回、久保 隆司さんのご紹介
の一回目をお送りします。

【1】鈴木 規夫ブログより、最近の記事の紹介

*2012年7月1日掲載記事 〜「異質なものと出会い、同化すること」〜より

先日、シカゴに出張したときに、同時通訳の方と話をしたのだが、そのときに、
非常に興味深いことを訓えてくれた。

「われわれ日本人が英語をつかうときには、どれほど有能なひとであっても、
普段の半分ほどのIQ(思考能力)しか発揮できないものなのです」

つまり、今日において、われわれが直面している試練とは、みずからの能力を
半分しか発揮できない言語環境の中で同僚と有益な共同作業をし、また、競合
との競争に勝利していくことを要求されているということなのである。

実務領域において、われわれに求められるのは、単に流麗にことばを操作する
ことだけではない。

われわれは、みずからのことばを関係者を納得させることができるだけの強度
をもつことばとして表現することを求められているのである。

そのためには、外国語をひとつの技術として習得するだけではなく、それを根
源的な意味で習得しなければならない。

即ち、その言語をとおして精神活動をおこなうときにはじめて生起しえるもう
ひとつの自己を育成する必要があるのである。

あえていえば、われわれが日本語を習得する過程で人格を構築してきたように、
その言語の習得する過程をとおして、あたらしい人格を構築するような心理的
な作業が必要とされるのである。

“Globalization”ということばには、多様な解釈が可能なことばであるが―
―また、多様な解釈が許されるべきことばである――そこで核心的に重要とな
るのは、ことばであり、また、ことばを習得する過程において、個人の中に展
開する人格的な変化である。

とりわけ、英語を母国語としない、われわれ日本人にとっては、これはとりわ
け重要な問題となると思う。

もしわれわれが英語習得を単なる道具を習得することであると解釈しつづける
ならば、結局のところ、われわれはいつまでも真に英語を習得することはでき
ないだろう。

また、真の言語習得があたえてくれる「視野の転換」と「意識の変容」という
恩恵をいつまでも経験できないまま、いつまでもこれまでの意識の枠組に囚わ
れつづけることになるだろう。

今後、人類をとりまく生存条件が激変する中で人類の経済活動の規則や構造も
変化をせまられることになるだろう。

その意味では、「ゲームのルール」は必ず変わるのであり、また、それに応じ
て、必要とされる機能的能力(competency)も変わることになる。

生存条件が変わりつづける限り、必要とされる機能的能力が変わるのは当然の
ことであり、また、われわれは常にそうした変化に対応していかなければなら
ない。

しかし、そうした変化の如何にかかわらず、自己の視野を転換・拡張するとい
う、意識の本質に根差した深層的能力だけは、今後とも、変わることなく、非
常に重要なもとして位置付けられていくだろう。

むしろ、その重要性はいっそう高まることだろう。

そうした能力を鍛錬するうえで、外国語の習得というのは、実に優れた方法で
ある。

とりわけ、われわれにとっては、英語という非常に異質な言語との出逢いは、
まさにそれが異質なものであればこそ、有効な鍛錬法となりえるのである。
異質なものと出逢い、異質なものと同化するということ。そして、その結果と
して、異なる自己がみずからの中に併存していることに気付くことができるこ
と。

“Globalization”とは、まずはそうした内的な変容の過程を経ることをとお
してはじまるものである。

そして、それはまたVision Logic段階への成熟の過程のはじまりでもあるので
ある。

*原記事は、こちらで読めます。http://norio001.integraljapan.net/?eid=37

【2】 インタビュー・シリーズ「インテグラルな人びと」〜第2回 久保 隆
司さん(1)〜

インタビュー・シリーズ「インテグラルな人びと」第2回は、『インテグラル
理論入門 I・II』の共著者のお一人である、久保 隆司さんです。久保さん
は、ジョン・F・ケネディ大学大学院にて身体心理学(Somatic Psychology)
を専攻され、インテグラル理論の枠組みを使いつつ、身体心理学を包括的に紹
介するという意欲的な著書、『ソマティック心理学』を上梓されています。留
学を決意された経緯、インテグラル・アプローチとの出会い、そしてご著書等
について伺いました。

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Q1. 商社マンから留学を志し、ソマティック心理学を学ばれた経緯について
は、ご著書『ソマティック心理学』のあとがきで触れられていますが、よろし
ければ、メールマガジンの読者の皆さんに、改めてお話しいただけますか?

A.1 読者の皆さんの参考になるかどうかわかりませんが、少し話しましょう。

もともと大学の学部時代は、文化人類学を専攻していて、スピリチュアルな分
野の本もそれなりに読んでいました。そして、卒論のテーマを『千年王国とし
ての多国籍企業論』にしようとしたのですが、当時はネット社会ではなく、情
報の入手が困難であったことであきらめました。そのかわりといっては何です
が、卒業後は、スピリチュアルの世界はまりすぎるのはバランス的に良くない
と考え、多国籍的経済活動をする総合商社に就職しました。実物経済を媒体と
して、地球上の異なる文化に属する人々と様々なかたちでむすびつくことがで
きる領域に興味を持ち、お金/商売の世界に飛び込んだのです。当初は、会社
が嫌になればやめればよいとの(現代の若者にも通じる?)考えもありました
が、バブル、そしてその崩壊過程から、21世紀初頭の経済大国としての中国
の勃興まで、最前線における体験者/観察者としての経験はある意味エキサイ
ティングで、結果として海外駐在を含め15年間の在籍となりました。そして
次のステップに移る機が熟していることを強く感じ、その思いを実行し、留学
したのです。

漠然ながらも留学を考え始めたのは、入社7年目くらいでしょうか。このメー
ルマガジンの読者の方々は、インテグラル理論やケン?ウィルバーにご興味のあ
る方ばかりでしょうが、私自身、それが高じて、ウィルバーに絡んでトランス
パーソナル心理学やイングラル理論を本場で学ぼうと考えたのです。しかし、
30歳を過ぎてから、留学資金を貯めたり、英語力をつけたり、また仕事の区
切りもあり、結局、さらに7年ほどの準備期間が必要でした。

留学先に関しては、当初はトランスパーソナル心理学を学べる大学院を探し、
ITP(トランスパーソナル心理学研究所), CIIS(カリフォルニア統合学研究
所), JFK大学, ナローパ研究所(現?ナローパ大学)などの学校のHPを覗きま
した。その過程でITP以外の三校には、ともに“ソマティック心理学”という
プログラムも設けていることに気づいたのが、ソマティック心理学との出会い
です。

当時から身体性に根づいた、いわば“地に足のついたトランスパーソナル心理
学”を志向していた私にとって、ソマティック心理学はとても魅力的に見えま
した。そして新しもの好きの私は、サンフランシスコ近郊で交通の便もよく、
フレキシブルな四学期制をとり、またプログラムディレクターもフレンドリー
だったJFK大学大学院のソマティック心理学科への進学を決めたのです。

Q2. ご専門のソマティック心理学は、「主観と客観のバランス、心と脳のバ
ランス、特殊性と普遍性のバランスなどに注目し、心身を抱えて生き抜くため
の学問および実践」(『ソマティック心理学』あとがきより)ということです
が、もう少し詳しくご解説いただけますか?(300ページを超えるご著書で述
べられていることをこの枚数で、というのは無理難題であると十分承知してお
りますが・・・)

A2. 詳しくかどうかはわかりませんが、少し話してみます。一人一人のユニー
クな体験を通して形成されてきた主観的存在としての心理の問題に、神経生理
学、生物学など、客観的な存在である脳や神経組織、身体器官に対する知見を
統合的に用いることで、ホーリスティックな視点からアプローチする心理学が、
ソマティック心理学です。情動(または感情)を媒介にして、身体と心理との
密接な関係性が近年ますます明らかになってきています。死後の世界はともか
く、生きている間は心と身体なしに、この世に存在することは一瞬たりともあ
りえません。そうであれば、素直に生身の身体、そしてその背後にあって心身
を包み込んでいる自然と向き合い、様々なチャネルを通じての“会話”を少し
でも豊かなものにすることが望まれます。その構造や方法を学問的に追求する
のがソマティック心理学なのです。 

インテグラル理論の用語を使うと、左側象限(心、身体意識、内面、主観、一
人称)と右側象限(脳、物質的な存在としての身体、外面、客観、三人称)の
双方をバランスよく見ることや、身体的な意識からインテグラル段階(心身統
合/ケンタウロス段階)の意識までの発達のスペクトルを考慮することによる、
インテグラルな(またはホーリスティックな)心理学/心理療法が、ソマティッ
ク心理学といえるでしょう。広義のソマティック心理学として、より身体性の
方向にシフトしているソマティックス(ボディワーク)、ダンス/ムーヴメン
トなどの関連分野も含むことがあります。

皆さんご存知の通り、古代では洋の東西を問わず、心(精神、または魂)と身
(肉体)のむすびつきから人間は成り立っていると考えられていました。しか
し、特に西洋社会においては、キリスト教的な身体蔑視観や、17世紀のデカ
ルト以後の近代合理主義思想、その後の還元主義的な科学思想の潮流において、
心と身体は相反する存在として、主であるべき心と従であるべき身体という対
立関係として、捉えられてきたという経緯があります。合理主義思想に基づく
(自然)科学が客観性、普遍性や普遍的法則を重視するのは妥当ですが、恣意
的、狭窄的な還元主義に安易に便乗し、個別性や特殊性を排除するようなこと
があれば、それによってものごとの大切な本質が失われてしまうことでしょう。

幸いなことに、特に20世紀の後半から、人間を理解するには、心と身体の密
接な関係性の観点が、非常に重要であると考える人が増えてきました。第二次
世界大戦後の東洋思想や実践(行法)の西洋社会への伝播(ヒューマン・ポテ
ンシャル・ムーヴメントなど)の影響もあることでしょう。心理学の領域にお
いても、言語を通じて専ら心(エゴ、自我)を扱う心理学/心理療法だけでは
バランスを欠き、ノンバーバルの領域や、無意識へのアクセスルートとしての
身体性などが注目されるようになってきたのです。21世紀はこのような全体
性に目を配り、バランスを重視する方向性が、さらに健全に成長していくこと
が時代の要請であり、実現することを願っています(次号へ続く)。

久保 隆司さん略歴:
大阪大学人間科学部卒。米国ジョン・F・ケネディ大学大学院修了。臨床心理士。
著作:
『ソマティック心理学』(春秋社、2011、単著)
『インテグラル理論入門T ウィルバーの意識論』、『インテグラル理論入門
U ウィルバーの世界論』(春秋社、2010、共著)
『PTSDとトラウマの心理療法 心身統合アプローチの理論と実践』、『PTSDと
トラウマの心理療法ケースブック 多彩なアプローチの統合における実践実例
』(創元社、2009、訳書)
ホームページ http://integralsomatics.jp

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配信日:2012年7月22日
発 行:インテグラル・ジャパン総合研究所
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発行人:鈴木 規夫

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