Integral Japan Mail Magazine Vol.54

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          Integral Japan Mail Magazine
            No. 54 (2011/12/05)
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【1】 鈴木 規夫のインテグラル・エッセイ〜「型」について〜
【2】 イベントのご案内
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皆様、こんにちは。今年も残すところ数週間となりましたね。インテグラル総
合研究所として初のメールマガジンをお送りします。今号では、弊研究所代表・
鈴木 規夫のインテグラル・エッセイ、「『型』について」を掲載しておりま
す。また、ご好評にお応えして、来年早々、再び発達段階測定のワークショッ
プを行うことになりました。ふるってお申し込みください。

【1】鈴木 規夫のインテグラル・エッセイ〜「型」について〜

今、数多くの識者が日本を「蘇生」するために様々な善意の発言をしているが、
何よりも必要とされているのは、「意見」や「鼓舞」や「批判」ではなく、具
体的に実践すべき「型」だと思う。そのようなものは所詮はその発言者の「ひ
とりごと」(monologue)に過ぎない。むしろ、今、真に必要とされているのは、
ひとりひとりが実際に実践できる型である。

今日、我々が直面する最も深刻な病理とは、無意識の内に思考することを外注
してしまう、その怠惰と無責任にあると思う。情報を収集・咀嚼して自律的に
思考をするということが、長距離走を完走するほどに過酷なことであるという
ことを示してくれる――そして、そのための思考体力を鍛錬するための方法を
呈示してくれる――真に寛容な智慧を示してくれる識者が求められているので
ある。

雑誌や書籍を眺めれば、「閉塞感」を打破するための意見が無数に主張されて
いるが、それらの意見や洞察を活用できるための前提条件である思考能力(思
考体力)が集合規模で枯渇していれば、それらは全く意味をなすことはあるま
い……。それらは不毛な土地に撒かれた種のように、その瞬間に死んでしまう
ことになるだろう。

そうした観点からいうと、個人的には、国内に存在する「格差」とは、情報量
の格差ではなく、むしろ、情報の咀嚼力――そして、その大前提である思考体
力――の格差なのではないかと思う。実際のところ、インターネットをはじめ
として、これだけ情報網が発展すると、情報がたりなくて困るということはそ
れほどない。あるのは、ありすぎるほどの情報の取捨選択をどうするかという
ことである。そのために必要とされるのは、大量の多様な情報に触れて、それ
らを咀嚼するための経験を豊富に積むことで、それらの真贋を見極めるための
感性と能力を育んでいることである。つまり、量を質に転化していること――
大量の情報を咀嚼する訓練を通じて、ひとつひとつの情報の質を見極めること
ができるようになっていること――が、全ての前提条件として必要とされてい
るのである。そうした前提が共有されているときに、はじめて我々は情報の奔
流に呑みこまれることなく、むしろ、それらと対話をし、また、それらを統合
できるようになるのである。

しかし、実際の状況は御寒い限りである。たとえば、講演会といわれる場所に
出掛けても、しばしば、講演者の「宣託」を拝聴することに熱心な信奉者の醸
し出す空気に悪寒を覚えることがある。端的なはなし、「講演」という方法そ
のものが、時代遅れのものとなりつつあることにたいする問題意識が、そうし
た場所には希薄なのである。そのことに愕然とするのである。

結局のところ、「情報」とは自らの責任で積極的に――大袈裟にいえば、命を
懸けて――獲得すべきことであり、それを講演会にいけば得られると思うこと
そのものが深刻な問題である。それは、たとえば武術の鍛錬をするために長時
間の講義を聴講しても、あまり意味がないのと同じことである。そこには実践
がないのである。

たしかに、達人といわれる人たちのことばには叡智が息づいており、そうした
ことばに感動して、自分のものとしてつかえるようになることは、束の間のあ
いだ、変化や成長を実現しえたという幻想を抱かせてくれるだろう。しかし、
それは実は成長をするということではなく、また、変容をするということでも
ないのである。そのことに気付けないからこそ、人々は真に探求することに貪
欲になれず、いつまでもことばを求めつづけるのだと思う。

こうしたこともあり、ことばをあたえることに汲々として、「型」という実践
の方法をあたえることに怠惰な知識人というのは、信用することができないの
である。彼等は自らが見せかけの充足感をあたえることに専念していることに
気付いていないのである。

それでは、信頼できる識者とはどのような人たちだろうか?

ここ数年のあいだ武術の練習に参加して、そこで指導をしてくれる方々を観察
して思うのだが、優れた指導者は総じて型を内在化させる方法を心得ていると
思う。課題や問題を呈示して、それを解決するための方向性を呈示する。その
ようにして探求者が主体的に思考錯誤するための文脈を設定することをとおし
て、我々に自己の肉体と精神を最も効果的に動かすための方法――「型」――
を発見することができるように刺激をするのである。

型とは秩序である。型を実践するとき、我々の肉体と精神は非常に合理的・効
果的・効率的な秩序にもとづいて機能するようになる。たしかに、その「型」
はあたえられたものであるかもしれないが、それが習得されるとき、我々はそ
れが常に自己の存在の中に息づいていたものであるような感覚を覚えるもので
ある。その意味では、それは自己の中に刻印されている秩序を再発見すること
でもあるのである。実際、型を習得することができた瞬間――とりわけ、それ
は、運動や武術をはじめとする身体性をともなう探求において顕著であると思
うが――我々は非常に深い納得感を経験するものである。

インテグラル理論においては、知識とは本質的に「実践」(practice・praxis)
と不可分のものとして位置づけられる。ケン・ウィルバー(Ken Wilber)は、
実践の下支えなしに主張される意見とは、結局のところ「イデオロギー」に過
ぎないという発言をしているが、換言すれば、それは知識というものが、単な
ることばではなく、それを創造するための活動や実践により生命をあたえられ
ているものであるということである。そのことに留意せずに、単にことばをあ
たえることが人間の成長や変化を生み出すと発想するのは、あまりにも浅薄な
のである。正にそのことに留意するからこそ、インテグラル理論においては、
実践をすることが徹底的に強調されるのである。

今日、これほどに膨大な量の情報が流通していながらも――また、書籍や講演
をはじめとする多様な勉強の機会が存在していながらも――それらが必ずしも
我々の深層的な成長や変化を促進するに至っていないのは、ひとつには、我々
が「知識」というものを(身体性を介在した)「実践」と切り離したところで
とらえているからであろう。それゆえに、真に「知る」ために必要となる努力
を過小視して、そのための基礎体力を育成することに怠惰になるのである。

インテグラル段階(Vision Logic Stage)の意識構造とは、意識(mind)と身
体(body)の統合を実現した意識構造であるといわれる。身体と乖離したとこ
ろで転換される知的探求は、往々にして、根源的な活力を欠く貧困なものとな
るか、あるいは、際限なく肥大化することに邁進する狂的なものとなる。それは、
知識というものを――そして、「知る」ということを――矮小化するために、
あたかもそれが手軽に収集したり、処理したりできるものであると錯覚するの
である。

今日、これほど大量の情報が流通しているにも関わらず、それらが、我々に活
力をあたえてくれるものではなく、むしろ、我々を圧倒するものとして――あ
るいは、窒息させたり、疲弊させたりするものとして――経験されるのは、ひ
とつには、そうした事情があるのではないだろうか……。

【2】イベントのご案内

2012年最初の講座は、発達段階測定基礎トレーニングです。インテグラル理論
の中核的要素でありながら、独学では概念的には理解できても、応用が効くま
で「身につける」「使いこなす」ことがなかなか難しい発達理論について、経
験豊富な講師から、実践形式で学んでみませんか? なお、本ワークショップ
は2010年末−2011年初頭に実施された「インテグラル・コーチング基礎講座I
――発達段階測定」とほぼ同内容のものとなりますが、数年かかって習得する
専門的内容の基本をお伝えするものですので、繰り返しの受講をお勧めいたし
ます。また、同講座を受講されていない方もご受講可能です。

*2012年 インテグラル・ジャパン ワークショップ 発達段階測定基礎トレー
ニング

[日時] 第1回:2012年1月21日(土)、第2回:2月25日(土)、第3回:3月
31日(土)(いずれも13:30〜17:00、開場13:15)
[場所] アトリエ・イフ・シーエイティー
〒158-0083
東京都世田谷区奥沢6-32-9 ローズコート自由が丘2-A
(東急東横線・大井町線 自由が丘駅徒歩5分)
アクセス・マップ: http://www.color-art.jp/access.html
[参加費] 45,000円(全3回一括でのお申し込みのみとなります。1回ずつの
お申し込みはできません)
[主催] インテグラル・ジャパン総合研究所
[講師] 鈴木 規夫 (インテグラル・ジャパン総合研究所代表)
[定員]10名(定員に到達次第締め切ります。お早めにお申し込みください)
詳細:お申し込み:http://integraljapan.net/info/seminar2012_assessment.htm

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インテグラル・ジャパン・メールマガジン No. 54
配信日:2011年12月05日
発 行:インテグラル・ジャパン総合研究所
http://www.integraljapan.net/
発行人:鈴木 規夫
編 集:千葉 絵里

*無断複製・転載を禁止します
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