Integral Japan Mail Magazine Vol.36

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          Integral Japan Mail Magazine
             No. 36 (2010/05/16)
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【1】  鈴木 規夫のインテグラル・エッセイ「世界を瞑想する」(上)
【2】  研究会のご報告とご案内
【3】 その他のイベントのご案内
【4】 編集後記
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皆さま、こんにちは。今号と次号の二号に渡り、弊社代表・鈴木 規夫による
エッセイ「世界を瞑想する」をお送りします。『インテグラル理論入門I:ウィ
ルバーの意識論』に引き続き、ILPの翻訳が近日中に出版されますが、今回の
エッセイでは、ILPの基本モジュールの一つである「スピリット・モジュール」
において中核的な実践として位置づけられている瞑想について、考察していき
ます。

【1】鈴木 規夫のインテグラル・エッセイ「世界を瞑想する」(上)

インテグラル・ライフ・プラクティス(Integral Life Practice・ILP)は、
自己の治癒と成長の実践に携わっていくうえで、私たちに「ボディ」(Body)・
「マインド」(Mind)・「スピリット」(Spirit)・「シャドー」(Shadow)
という存在の4つの領域の実践に同時並行的にとりくむことを推奨します。各
領域の実践は、それそのものとして独立した意味を有していますが(「モジュー
ル」)、それらは同時並行的にとりくまれることをとおして相互に効果を増幅
しあう相補的な関係にあるものとして見なされます。

瞑想(meditation)は、「スピリット・モジュール」(spirit module)の実
践の核に位置づけられます。そして、ILPにおいて、瞑想には大別して3種類の
ものがあると説明されます。即ち、それは、自己の深層を瞑想する1人称の瞑
想、他者としての神聖性とむきあい、それと「対話」をする2人称の瞑想、そ
して、被造物としての世界を観想する3人称の瞑想です。

書籍『ILP』(『実践 インテグラル・ライフ』春秋社刊)において、瞑想とは、
全ての人間が実践することができる――また、しばしば、それと意識すること
なく、自然に実践している――人間の生得的な能力であり、活動であると説明
されます。

しかし、こうして3種類のものがあると説明されると、私たちは、果たしてそ
の全てについて真に理解することができているのだろうかと少々不安になるの
も事実です。

そもそも、私たちのほとんどは、生まれてから、瞑想を実践するための特別な
訓練を受けたことはありません。実際のところ、瞑想というものがいかなるも
のであるのかについて判然としないというのが正直なところなのではないでしょ
うか……?

ですから、瞑想には3種類のものがあるといわれても、そもそも瞑想そのもの
が果たしていかなるものであるのかを知らないのですから、当惑するのも当然
です。

しかし、個人的には、実はそれほど心配することではないのではないだろうか
と考えています。

瞑想というものについて理解するうえで、鍵となるのは、それが人間の生得的
な能力であるという洞察です。即ち、それは、私たちが日常において――ある
いは、人生のある瞬間や季節において――それをしたいという自然な欲求に衝
き動かされ、意識的・無意識的にしている自然な営みなのです。

結局のところ、統合的実践とは、人間がその存在のなかに生まれながらに有し
ている資質や能力にもとづくものでなければ、持続可能なものとはなりえませ
ん。瞑想というものについて把握するときにも、その法則がそのままあてはま
るのです。

ここでは、3種類あるうち、2人称の瞑想に焦点を絞り探求をしてみたいと思い
ます。

Christopher Bascheは、"Dark Night, Early Dawn"(State University of
New York Press)という著作のなかで、自己の瞑想体験を紹介しながら、それ
を集合意識と合一する体験として説明しています。また、Richard Tarnasは、
"The Passion of the Western Mind"(Ballantine Books)のなかで、西欧
の歴史を概観しながら、各歴史局面における画期的(epoch making)なイベン
トが、集合意識の顕現として生まれたものであるという主張を展開します。

これらの執筆者の主張の具体的な詳細に同意をするかどうかは別として、そこ
に呈示される洞察が、私たちにとって非常に興味深いものに思われるのは、そ
れが、個人というものが何ものかによって生きられている存在なのではないか
という感覚をとらえるものであるからです。

今日、私たちは、「能力開発」や「自己実現」を至上の価値とする非常に個人
主義的な世界観のなかに生きていますが、多数の人々が、そこに生成される空
間に窒息するような窮屈さを感じています。いうまでもなく、それは、「私」
("I")を「神」に祭り上げて、ひたすらに自己を探求し、発見し、実現す
ることを過度に強調する自己執着が必然的に醸成するものです。つまり、そこ
では、「私」というものが、もしかしたら、何ものかに生きられているもので
はないのかという2人称的な発想が排除されているのです(次号に続く)。

【2】研究会のご案内とご報告

4月のケン・ウィルバー研究会を4月18日に開催しました。今回は、「インテグ
ラル理論の現状と今後」というテーマで、ケン・ウィルバーの盟友・ロジャー・
ウォルシュの論文に沿ってディスカッションを行いました。

ウォルシュの論文は、2008年に開かれたIntegral Theory Conferenceでの講演
をもとにしたものです。アメリカでは、ショーン・ハーゲンス博士を初めとす
る、ウィルバーの次の世代の論客が旺盛な執筆活動を展開し、コーチング・コ
ンサルティングや建築・街づくりなどへの応用も進んでいますが、インテグラ
ル・アプローチがメインストリームに十分に浸透しているとはまだ言えません。
こういう状況の中、インテグラル・コミュニティの集まりは一種"エリート・
クラブ"的な、独特の雰囲気を醸し出しつつあり、そのことに対する問題意識
がこの論文の背後にはあるようです。

ウォルシュは、インテグラル・コミュニティに集まる人々が陥りがちな罠を、
どの段階にも当てはまる普遍的な罠と、特定の発達段階固有の罠に分けて取り
上げています。普遍的な罠としては、メインストリームと関わりを持たないこ
と、それまで自分がいた発達段階を過剰に批判すること、また逆に新たに獲得
した視点に執着し乱用することなどが挙げられます。また、トランスパーソナ
ル的な罠としては、心理的な問題に直面するのを回避するためにスピリチュア
リティを口実として用いること(「スピリチュアル・バイパス」)、問題や病
理により生じることがありうる事象を、より高次の発達段階に由来するものと
して解釈しようとすること、知的な理解にのみ留まってしまい、実践がおろそ
かになること(いわゆる、頭でっかちになること)などが挙げられました。

議論が盛り上がったのは、インテグラル理論を理解するためのハードルの一つ
として取り上げられていた、「大人の発達段階という概念を理解するのが難し
い」というポイントでした。確かに、「意識が発達する」「物事を見る視点が
増え、より複雑なものの見方できるようになる」ということは、金銭的成功や
物質的幸福の増進のように、目に見えて分り易いものではありません。また、
年齢が上がるにつれて、できることが明確に増えていく子供の段階的発達より
も、理解が難しいのも確かでしょう。

加えて、次のような側面もあります。発達論的なものの見方がある程度受け入
れられるようになりはじめているアメリカにおいても、個人の人格そのものを
対象とする意識構造の発達論は、極めて慎重に扱われています。元々、大変デ
リケートな取扱いを要求する議論なのですが、発達論的なものの見方がまだま
だ敬遠されたり抑圧されたりしがちな日本の土壌においては、いよいよ扱いが
難しいのも事実です。「意識の発達段階は、本当は垂直的なものではあるが、
タイプ論のように、水平的なものとして紹介している」「誰もが到達しうる可
能性を持っていることを強調する」など、日頃インテグラル・アプローチを紹
介する上で苦労を重ねている方々から、様々な意見やアイディアが出ました。
議論を通して、意識の発達段階という道具立てを用いて他者を理解し関わるに
は、高い倫理性と他者への思いやり・慈しみの心が求められる、という点につ
いて、改めて共通理解ができたように思います(千葉)。

*5月のケン・ウィルバー研究会のご案内

5月のケン・ウィルバー研究会は5月23日(日)に開催します。今回は、4月末
に発売された『インテグラル理論入門I:ウィルバーの意識論』(春秋社)を
とりあげます。今回の研究会では、こ の書籍でとりあげられているAQALの各
構成要素の内容を詳細に探求するのではなく、書籍を概観しながら、現代にお
いて、インテグラル理論を一般に紹介していくうえで、紹介者/実践者が心懸
けるべき重要な留意点というものがどのようなものであるのかということにつ
いて探求していきます。

今回の研究会では、発表者(鈴木 規夫)より、入門書が執筆されるに至った
経緯について御紹介します。

参考図書
鈴木 規夫・久保 隆司・甲田 烈・青木 聡(著)
『インテグラル理論入門?:ウィルバーの意識論』
春秋社(2010年4月)
ISBN:4393360559
税込価格:2,310円

開催日:5月23日(日曜日)13:00〜16:00 p.m.
開催場:アトリエ・イフ・シーエーティー
     世田谷区奥沢6-27-2 アーバンSKビル2階
    自由が丘駅より徒歩7分
    九品仏駅より徒歩2分
    アクセスマップ:http://www.color-art.jp/access.html
参加費用:2,000円(一般)
      1,800円(IJ Members会員)
参加条件:特にありません

主催:インテグラル・ジャパン
URL:http://integraljapan.net/
連絡先:info@integraljapan.net

【3】その他のイベントのご案内

(1)女性のためのインテグラル・ライフ・サークル
   (2010年5月19日(水)19:00〜21:00 アトリエ・イフ)
*『グレース・アンド・グリット』の読書会は前回で終了し、今回からリーア
ン・アイスラー『ゼロから考える経済学――未来のために考えておきたいこと』
(ISBN-10: 4862760570)を読んでいきます。
*先月より、IJ Members会員以外の方にもご参加いただけるようになりました。
インテグラル・アプローチに興味があり、参加規約にご賛同いただける女性で
あれば、どなたでもご参加いただけます。詳しくは、詳細ページをご覧下さい。
*詳細:http://womensintegrallife.seesaa.net/
*申込:http://integraljapan.net/info/wilp_info.htm

(2)インテグラル理論中級講座
(第1回:開催済み、第2回:5月29日(土)、第3回:6月19日(土)、いずれ
も13:30〜17:00 アトリエ・イフ)
*インテグラル理論を実践の枠組みとして利用するための基礎を学びます。入
門講座・基礎講座・ILPなどで学び、リーダーシップを発揮していくために、
また対人関係や仕事においてインテグラル理論を活用していくために、一歩踏
み込んだ学習をしたい方に特にお勧めです(受講資格の詳細については、弊社
HPでご確認ください)。1回ずつのお申込が可能ですので、まだ申し込めます。
*詳細・申込:http://integraljapan.net/info/seminar2010_tyukyu.htm

(2)インテグラル・ダイアローグ・サークル
(2010年6月7日(月)、6月21日(月)、7月5日(月)、7月19日(月祝)、8
月2日(月)、8月24日(火)の全6回、いずれも18:30-21:00 きゅりあん)

*三ヶ月に渡り、固定のメンバーでインテグラル・ライフ・プラクティス(IL
P)の実践を深めていきます。自分の実践のプログラム作りから始め、ILP固有
のコンセプトについても随時解説していきますので、初めてILP・自己成長の
実践に取り組むという場合も心配いりません。
*1回ずつの申込はできません(一括申込のみ)。
*詳細・申込:http://integraljapan.net/info/seminar2010_IDC.htm

(3)インテグラル理論基礎講座(夏期)
(2010年7月19日(月祝)、8月21日(土)、9月18日(土)、いずれも13:30-
17:00、アトリエ・イフ)

*『インテグラル理論入門? ウィルバーの意識論』の出版を受け、基礎講座
をもう一度開催します。入門書を読んで、更に詳しく知りたいと思った方にお
勧めです。1回ずつ申込可。
*会場の都合により、元々お知らせしていた予定から時間が変更になりました。
こちらの情報(開場−13:15、開始−13:30、終了−17:00)が最新です。
*詳細・申込:http://integraljapan.net/info/seminar2010_kiso_summer.htm

【4】編集後記

本文でもお知らせいたしました通り、『インテグラル理論入門I ウィルバー
の意識論』が四月末に刊行されました。お読みいただいた方からの感想はおお
むね好評のようです。これを機会に、インテグラル理論が多くの方に知られ、
それぞれの場において、活用されていくことを願っています (千葉)。

*ご意見、ご感想などはお気軽にどうぞ! info@integraljapan.net
*本メールマガジンの送付先アドレスの変更、及び、配信不要の方は、
info@integraljapan.netまでご連絡ください。

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インテグラル・ジャパン・メールマガジン No. 36
配信日:2010年5月16日
発 行:インテグラル・ジャパン株式会社
http://www.integraljapan.net/
発行人:鈴木 規夫
編 集:千葉 絵里

*無断複製・転載を禁止します
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