Integral Japan Mail Magazine Vol.35

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Integral Japan Mail Magazine
No. 35 (2010/04/21)
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【1】 『インテグラル理論入門I:ウィルバーの意識論』出版のお知らせ
【2】 イベントのご案内
【3】 編集後記
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皆さま、こんにちは。このたび、弊社代表取締役・鈴木 規夫が筆頭執筆者を
務めた『インテグラル理論入門I:ウィルバーの意識論』が春秋社より出版さ
れることになりました。ケン・ウィルバー自身の著作の翻訳を除けば、日本語
で書かれた初めての本格的なインテグラル理論入門書です。今号では、執筆の
背景と意図について解説した鈴木 規夫のエッセイを収録しています。ぜひ、
多くの方に本をお読みいただき、高度に複雑化し変化の激しい時代の羅針盤と
して、インテグラル・アプローチを活用していただく端緒となれば、と願って
おります。

【1】『インテグラル理論入門I:ウィルバーの意識論』出版のお知らせ

昨年、ケン・ウィルバー(Ken Wilber・以下KW)の最新著書であるIntegral
Life Practice: A 21st-Century Blueprint for Physical Health, Emotional
Balance, Mental Clarity, and Spiritual Awakening(ILP)の翻訳を担当さ
せていただくことが決定したとき、春秋社の編集者の方から、それと並行して
KWのインテグラル思想の入門書の執筆の依頼をいただきました。

ただ、ILPという書籍そのものが大部の作品であることもあり(400頁程)、そ
の翻訳作業と並行して、一冊の著書をひとりで執筆することは、少々困難に思
われました。そこで、過去数年にわたりインテグラル思想に関して対話をして
きた数人の友人と同僚に声をかけて、彼等との共著ということで、この作品を
まとめることにしました。

周知のように、インテグラル思想は、多様な要素により構成されています。そ
れらの全てについてひとりで執筆するよりは、それぞれの個性と専門性を尊重
しながら、複数の著者で文章を執筆し、それらをひとつの作品にまとめていく
という方法を採るほうが、インテグラル思想の本質を的確に反映した作品がで
きあがるのではないか……。そして、それにより、読者の方々にとっても、い
っそう価値のある作品をつくりだすことができるのではないか……。そうした
思惑もあり、今回の作品は、これまで日本において、KWのインテグラル思想の
普及に貢献をしてきた4人の執筆者による共著というかたちでまとめられるこ
とになりました。

こうして、昨年の春以降、執筆者のあいだで度重なる協議をしながら、書き進
めてきた『インテグラル理論入門 I:ウィルバーの意識論』が、今月、漸く出
版される運びとなりました。

1980年代以降、日本では、KWの著書のほとんどが翻訳され、読まれてきました。
その意味では、日本は、世界でもKWの著書がもっとも旺盛に紹介されてきた国
のひとつであるということができます。しかし、北米・南米・欧州・豪州と異
なり、日本では、そうして書籍として紹介されたあと、そこで提示されたアイ
ディアが、社会のメインストリームに受容され、また、実際の実務領域におい
て応用されるということはあまりありませんでした。

とりわけ、1995年以降、『進化の構造』(Sex, Ecology, Spirituality: The
Spirit of Evolution)の出版を契機として、KWの思想は、真の独自性をもっ
た「インテグラル思想」として確立され、海外では、多様な領域において「実
践」されるようになります。しかし、逆に日本では、KWに対する関心は、多数
の良心的な紹介者の努力にもかかわらず、そのころを境にして、むしろ徐々に
減退していったように思われます。

CIIS(California Institute of Integral Studies)での研究生活を終えて、
2004年に帰国して、国内のこうした状況に直面して、私は、少々驚くとともに、
今日にいたるまでそのことに漠然とした危機感を抱きつづけてきました。

21世紀を迎えて、世界の情勢はこれまで以上に流動化・複雑化しています(実
際、私自身、10数年にわたる合衆国での滞在中、2001年の同時多発テロ事件に
くわえて、2回のイラク侵攻を目撃しており、資源の枯渇の問題をはじめとし
て、世界の情勢が真に危機的な状況を迎えはじめていることを肌身で実感する
ことになりました)。こうした状況の中で私たちが注意を払わなければならな
い情報の量は爆発的に増大しています。

しかし、そのことは、また、私たちにそうした圧倒的な情報の洪水に麻痺する
ことがないように、自身の情報処理能力を鍛錬し、また、この刻々と複雑化す
る世界に果敢に対峙することができるための胆力を深化させることを要求する
ことになっています。こうした状況の中で麻痺するのではなく、逆に、その混
沌を的確に咀嚼・整理して、そこに存在する多様な情報や現実を相互に関連す
るまとまりに統合していくためには、それを可能とする思想的な枠組みが必須
となります。

現在、KWの著作は、ビル・クリントンやアルバート・ゴアをはじめとする、多
数の指導者に読まれていますが、それは、今日の混沌とした世界と真に向き合
おうとするとき、そうした混沌の只中に秩序を見出すことを可能とする包括的
枠組(meta-framework)無しには、事実上の機能不全状態に陥ることになるこ
とを彼等が痛感しているからであることは間違いありません。つまり、KWの著
作が組織や自治体や国家のリーダーにより読まれているのは、そうした枠組を
確立することが、極度の複雑性という21世紀の現実と日々対峙するうえで緊急・
重大な喫緊の課題となっているからなのです。

その意味では、本質的な問題はKWの著作が読まれているかどうかということで
はありません。実際、これから「ポストモダン」と呼ばれた時代が終焉に向か
うなかで、それを超克する包括的枠組が必要とされるのは当然のことであり、
その過程において、KWのインテグラル理論だけでなく、多数のそうした理論が
構想・提示されることになることは必然のことであるといえます。

むしろ、問題は、こうした時代的な課題が意識されにくい文化的状況が国内に
存在するということです。

これほどまでに「情報化社会」ということばが喧伝されていながら、そこには、
まだ、それがもたらすことになる麻痺や混乱をはじめとする、諸々の深刻な問
題に対する問題意識が十分に共有されているとはいえいません。むしろ、とき
として、われわれは実際には「情報鎖国」といえるような状況に生活している
のではないかという気持ちになることさえあります。実際、大学や企業等にお
いて、専門的な研究や実践にとりくんでいる方々と話をすると、彼等は、日本
語で読むことのできる資料のうち、最新のものであっても、海外で10年以上前
に発表されたものであるといいます(このことは、たとえば、私自身が専門と
する発達心理学(constructive developmental psychology)の分野において
も、既に古典的な価値をもつとされるRobert Keganの著作が紹介されていない
等、そのままあてはまります)。そこには、時代の流れからとり残されて貧困
化する文化空間が、私たちの目のまえに頑強に居座りつづけていることを示し
ているように思われます。その意味では、もしかしたら、私たちはまだ情報化
社会の実態を実感するところに辿りついていないのかもしれません。

KWが、トランスパーソナルの思想家としての枠組みに収まることを拒絶し、イ
ンテグラル思想という構想を呈示したとき、そこには――Integral Ecologyの
著者であるSean Hargens博士が指摘するように――21世紀という時代が人類に
歴史的な課題を衝きつけることになることに対する直観が息づいていたように
思われます。それは、真実の多様性の爆発をまえにして、そこに統合的な秩序
を確立するという、優れて発達論的な叡智を涵養するというものです。

発達というものが、基本的に、「生と死」の問題に密接に関係する実存的な課
題です。それは、それ無しには、もはや自己の持続可能性を維持することがで
きないという肉体的・精神的な危機に触発されて起こるものといえるのです。
その意味では、インテグラル思想というものは、21世紀において、私たちが直
面している独自の「生と死」の問題を解決するために生まれたものであるとい
えるのです。残念ながら、日本においては、KWは単に精神世界の思想家として
認識され、受容されてきたところがあり、こうした思想的な射程の拡大を契機
として、その思想に対する関心が減退しはじめたのは、当然のことといえるの
かもしれません。

しかし、これまでに様々な講義や研修を開催してきて実感するのは、一方では、
そうした時代の先端に生まれている統合の必要性を実感しはじめている人々が
日本にも相当数生まれているということです。これまでの時代において効果を
発揮した諸々の思想や発想では対応することのできない、高次の構造的な複雑
性をもつ課題と自らが対峙していることを直感する人々です。そして、個人的
には、今後、インテグラル思想の受容者となることができるのは、実は、これ
までに「精神世界」の思想家としてKWを評価してきた人たちではなく、そうし
た時代の先端に息づく危機と可能性に対峙することのできる敏感な感性と構造
的な成熟をもつ人たちなのではないかと思うのです。

今回、出版される共著(そして、その続編)は、そうした現代思想としてのKW
の本質を紹介するために執筆されました。著者として、この著書がひとりでも
たくさんの方々の目に触れることができることを祈念しています(鈴木 規夫)。

*書籍情報
鈴木 規夫・久保 隆司・甲田 烈・青木 聡(著)『インテグラル理論入門I:
ウィルバーの意識論』春秋社(2010年4月)
ISBN:4393360559
税込価格:2,310円

【2】イベントのご案内

(1)女性のためのインテグラル・ライフ・サークル
   (2010年4月21日(水)19:00〜21:00 アトリエ・イフ)
*『グレース・アンド・グリット』読書会の最終回です。本の内容と関連させ
つつ、自由なダイアローグを行い、インテグラル理論のポイントもご紹介しま
す。
*今月より、IJ Members会員以外の方にもご参加いただけるようになりました。
インテグラル・アプローチに興味があり、参加規約にご賛同いただける女性で
あれば、どなたでもご参加いただけます。詳しくは、詳細ページをご覧下さい。
*詳細:http://womensintegrallife.seesaa.net/
*申込:http://integraljapan.net/info/wilp_info.htm

(2)インテグラル理論中級講座
(第1回:2010年4月25日(日)、第2回:5月29日(土)、第3回:6月19日(土)、
いずれも13:30〜17:00 アトリエ・イフ)
*インテグラル理論を実践の枠組みとして利用するための基礎を学びます。入
門講座・基礎講座・ILPなどで学び、リーダーシップを発揮していくために、
また対人関係や仕事においてインテグラル理論を活用していくために、一歩踏
み込んだ学習をしたい方に特にお勧めです(受講資格の詳細については、弊社
HPでご確認ください)。
*詳細・申込:http://integraljapan.net/info/seminar2010_tyukyu.htm

(3)5月のケン・ウィルバー研究会
(2010年5月23日(日)13:00〜16:00 アトリエ・イフ)
*今号でご紹介した『インテグラル理論入門1 ウィルバーの意識論』を参考
に、AQALの基礎を再確認していきます。参加資格は特にありません。お申込も
必要ありませんので、お気軽にお立ち寄りください。
*詳細は、IJブログに掲載します。下記にてご確認ください。
http://blog.integraljapan.net/

(4)インテグラル・ダイアローグ・サークル
(2010年6月7日(月)、6月21日(月)、7月5日(月)、7月19日(月祝)、8月
2日(月)、8月24日(火)の全6回、いずれも18:30-21:00 きゅりあん)

*三ヶ月に渡り、固定のメンバーでインテグラル・ライフ・プラクティス(ILP)
の実践を深めていきます。自分の実践のプログラム作りから始め、ILP固有の
コンセプトについても随時解説していきますので、初めてILP・自己成長の実
践に取り組むという場合も心配いりません。

*詳細・申込:http://integraljapan.net/info/seminar2010_IDC.htm

【3】編集後記

『インテグラル理論入門I ウィルバーの意識論』は、今月末に店頭・オンラ
イン書店にて発売予定です。ILPの翻訳書も、印刷に回される最終段階になり
ました。ILPの翻訳には、インテグラル・ジャパンのメンバーも検読や図表作
成に協力し、会社上げての取り組みとなりました。このため、翻訳作業が進行
中はあまり多くのワークショップを開催することができませんでしたが、書籍
の刊行を機に、インテグラル・アプローチが多くの人に知られ、自分の生活や
仕事、問題解決に生かしていこうという機運が高まることを期待しています(
千葉)。

*ご意見、ご感想などはお気軽にどうぞ! info@integraljapan.net
*本メールマガジンの送付先アドレスの変更、及び、配信不要の方は、
info@integraljapan.netまでご連絡ください。

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インテグラル・ジャパン・メールマガジン No. 35
配信日:2010年4月21日
発 行:インテグラル・ジャパン株式会社
http://www.integraljapan.net/
発行人:鈴木 規夫
編 集:千葉 絵里

*無断複製・転載を禁止します
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