Integral Japan Mail Magazine Vol.34

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Integral Japan Mail Magazine
No. 34 (2010/04/06)
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【1】「『万物の歴史』を読む」特別シリーズを終えて〜研究会報告
【2】イベントのご案内
【3】編集後記
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皆さま、こんにちは。新年度が始まりましたね。インテグラル・ジャパンでも、
6回にわたってお送りしてきたケン・ウィルバー研究会・「『万物の歴史』を
読む」特別シリーズが最終回を迎えるなど、区切りの春を迎えております。更
に充実した講座・ワークショップを開催していくべく、計画を立てております
ので、どうぞお楽しみに。それでは、まず、その研究会報告からお送りします!

【1】「『万物の歴史』を読む」特別シリーズを終えて〜研究会報告

インテグラル・ジャパンでは、「『万物の歴史』を読む」と題して、昨年より
全6回の研究会を開催してきました。『万物の歴史』は、ケン・ウィルバーの
インテグラル思想を理解するうえで、最良の入門書として知られている作品で
す。英語圏では文庫化されて、ひろく読まれていますが、残念ながら、国内で
は長らく品切状態がつづいていました。

幸いにも、昨年、春秋社の尽力により、新装版として再出版され、再び入手で
きることになりました。インテグラル・ジャパンでは、これを機会に、この著
作の研究会を開催することにしました。半年に及んで開催された研究会には、
たくさんの方々に参加していただき、意義深い対話をすることができました。
この場を借りて、参加していただいた方々に感謝の気持ちをおつたえしたいと
思います。

先日、『インテグラル・エコロジー』(Integral Ecology)の著者である
ショーン・ハーゲンス(Sean Hargens)博士と二時間ほどにわたり話をするこ
とがありました。

博士は、現在、カリフォルニア州にあるJFK大学(John F. Kennedy University)
のインテグラル理論学部の統括者を務めており、また、インテグラル研究所
(Integral Institute)が発行する研究誌「The Journal of Integral Theory
and Practice」の編集長でもあります。

二時間に及ぶインタビューのなかでは多岐にわたる話題がとりあげられました
が、個人的にとりわけ印象的であったのは、「今、インテグラル理論は、21世
紀の情報の洪水に適応するための生存の技術として世界中で受容されはじめて
いる」というハーゲンス博士の指摘でした。

「多様性尊重」というポストモダンの価値観が有効なものでありえたのは、欧
米においては、1980年代までのことでした。

しかし、そうした思潮のもとにもたらされた状況は、情報の過剰をひきおこし、
人々を事実上の麻痺状態に陥れることになりました。

また、インターネット網の確立は、個人を不可避的に情報の奔流の中にまきこ
むことを通して、こうした趨勢に拍車をかけているようです。

博士は、インテグラル理論の「包括性」と「簡潔性」は、こうした同時代の生
存状況に適応するための非常に効果的な方法を示していると主張します。

こうした説明を聞きながら、わたしが感じたのは、日本で普通に生活しながら、
こうした時代認識を共有するのは実は思いのほか難しいことなのではないだ
ろうか……という気持ちでした。

ひとつには、ことばの問題があります。

名著『日本語が亡びるとき』のなかで、著者の水村 美苗氏は次のような指摘
をしています。

「インターネット網の確立は、事実上、英語を人類の共通言語として確立する
ことに寄与した。実際、国際政治や先端科学等の普遍的な重要性をもつ話題を
めぐる対話は全て英語で執りおこなわれており、各組織や各国家を代表する優
秀な頭脳は、自らの研究と発表を一貫して英語を用いてすることを求められは
じめている。こうした状況は、英語以外の言語空間で行われる文化的活動を総
体的に質的・量的に貧困化させており、結果として、「英語 対 非英語」とい
う知識と情報の格差を生みだすことになってしまっている。」

少し大雑把ではありますが、水村氏の洞察はこうした内容のものでした。

非常に残念なことですが、確かに、日本語の言語空間が貧困化しているという
のは間違いのないことのようです。

書店を訪れても、そこには非常に貧弱な著書ばかりが並べられています。

数十年にわたり読みつがれていくだけの「強度」をそなえた書籍の数は圧倒的
に減少しているように思えます。

実際、出版社の編集者の方々と話をしていると、「内容のある書籍が売れなく
なった」という発言をしばしば耳にします。

そこには、まさに、日本語の言語空間において、真に意味のあることばが求め
られ、そして、生みだされていくという構造そのものが瓦解しはじめているこ
とが如実に窺われます。

世界の優秀な頭脳が集結して、刻々と知識と叡智が創造されている英語の言語
空間と比較して、日本語の言語空間が貧困化しているのは、そうした時代の状
況に起因するものでもあるのです。

英語の言語空間に生きるひとたちが「情報の過剰」という課題に直面している
のとは異なり、逆に、わたしたち日本人は「情報の貧困」という課題に直面し
ているということができそうです。

そして、インテグラル思想・理論の受容に関する内外の温度差というのは、こ
のあたりにその原因があるようです。

そもそも統合への欲求が生まれるためには、先ず自己を多様性のなかにさらす
ことが必要となります。

この世界をとらえるための方法として、これまでに人間は実に様々な方法を創
造してきました。

そこには、たとえば思想があり、宗教があり、芸術があり、武道があり、倫理
があり、科学があります。

こうしたものを探求するとき、わたしたちは、それぞれがある特定の視点や方
法にもとづいて世界の本質を開示するものであることに気づきます。

統合とは、そうしたことを認識するときにそこにめばえてくる「それぞれはど
のように相互に関連しているのだろう」という疑問と共にはじまるプロセスと
いえるのです。

その意味では、統合に至るまえに、わたしたちはやはり多様性のただなかに自
己をさらすという作業を踏む必要がどうしてもありそうです。

水村氏の指摘する「日本語の言語空間の貧困化」という問題が深刻であるのは、
こうした多様性体験の段階を非常に困難にすることにあるように思われます。

日常のなかに、人類の歴史を通じて蓄積されてきた叡智を知るためのことばが
なければ、その出発地点にさえ着くことができません。

また、それらの叡智は、ときとして初心者を寄せつけないような峻厳なことば
で著されています。

そうした難解さをまえにしても、尚それらを忍耐強く理解していこうとする能
力と胆力がわたしたちには必要とされるのです。

「日本語の貧困化」は、こうした「基礎体力」を鍛錬するための機会そのもの
をわたしたちから奪いかねないのです。

それは、大袈裟ではなく、21世紀という時代において惑星規模でめばえはじめ
ている統合への希求を理解することを困難にするというだけでなく、その前提
条件である人類の知的遺産の継承ということすら難しくすることになりかねま
せん。

その意味では、今わたしたちに求められているのは、この21世紀という時代に
おいて、惑星規模でどのような状況が生まれているのかを認識することであり、
また、自らの共同体がそうした文脈のなかでどのような状況に立たされてい
るのかを把握するということであるといえそうです。

異なる規模の世界を同時に視野に収める複眼的な視野は、インテグラル思想が
重視するヴィジョン・ロジック(Vision-Logic)の重要な特性でもあり、また、
それは、現代という時代に建設的に参画していくための必須条件であるよう
にも思われます(鈴木 規夫)。

*ショーン・ハーゲンス博士のインタビューは、IJ Members会員誌Integral
Life第5号にてお読みいただけます。インテグラル・ムーブメントの最先端の
動向を伝え、親しみ易い切り口からインテグラル理論をご紹介するIntegral
Lifeを読めるのはIJ Members会員だけ。このほか、会員にご登録いただくと、
講座・ワークショップ受講料が10%割引になる(一部例外あり)など、特典満
載です。この機会に、IJ Members会員になりませんか?

IJ Membersのお申込はこちらから:
http://integraljapan.net/info/ijmembers.htm

【2】イベントのご案内

(1) ケン・ウィルバー研究会
(2010年4月18日(日)13:00〜16:00 アトリエ・イフ)
*テーマは「インテグラル・ムーブメントの現状と今後」です。事前申込は必
要ありません。お気軽にお立ち寄りください。
*詳細:http://blog.integraljapan.net/?eid=1360278

(2) 女性のためのインテグラル・ライフ・サークル
(2010年4月21日(水)19:00〜21:00 アトリエ・イフ)
*『グレース・アンド・グリット』読書会の最終回です。本の内容と関連させ
つつ、自由なダイアローグを行い、インテグラル理論のポイントもご紹介しま
す。
*詳細:http://womensintegrallife.seesaa.net/
*申込:http://integraljapan.net/info/wilp_info.htm

(3)インテグラル理論中級講座
(第1回:2010年4月25日(日)、第2回:5月29日(土)、第3回:6月19日(土)
いずれも13:30〜17:00 アトリエ・イフ)
*インテグラル理論を実践の枠組みとして利用するための基礎を学びます。入
門講座・基礎講座・ILPなどで学び、リーダーシップを発揮していくために、
また対人関係や仕事においてインテグラル理論を活用していくために、一歩踏
み込んだ学習をしたい方に特にお勧めです(受講資格の詳細については、弊社
HPでご確認ください)。
*詳細・申込:http://integraljapan.net/info/seminar2010_tyukyu.htm

【3】編集後記

インテグラル・ジャパンでは、春から始まる新講座・ワークショップに備え、
スタッフも力量を充実させていくべく、スタッフ研修を行っています。研修に
参加してみて思うのは、月並みですが、理論を理解するのと実際に技法を使え
るのとは違うなあ、ということ。今年は、実践重視のプログラムを多く計画し
ております。必ずしも簡単ではないかもしれませんが、様々な面で刺激に富み、
充実感を味わえるワークショップをご提供できたらと思っています(千葉)。

*ご意見、ご感想などはお気軽にどうぞ! info@integraljapan.net
*本メールマガジンの送付先アドレスの変更、及び、配信不要の方は、
info@integraljapan.netまでご連絡ください。

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インテグラル・ジャパン・メールマガジン No. 34
配信日:2010年4月6日
発 行:インテグラル・ジャパン株式会社
http://www.integraljapan.net/
発行人:鈴木 規夫
編 集:千葉 絵里

*無断複製・転載を禁止します
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